前頭側頭型認知症
2015年2月
1)筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学
2)財団法人東京都医学総合研究所,認知症・
高次脳機能研究分野,認知症プロジェクト
新井 哲明
第1章 概念の変遷
 1892年から1906年にかけて、Arnold Pickは、前頭・側頭葉の萎縮を呈し、特異な言語症状および精神症状を示す一連の症例を報告しました[1]。その後、1911年のAlois Alzheimerによる嗜銀性神経細胞内封入体(ピック球)の記載を経て[2]、1926年OnariとSpatzにより限局性大脳皮質萎縮の状態に対してピック病の名称が与えられ、一疾患単位として位置づけられました[3]。しかし、彼らがピック病としてまとめた症例にはピック球を有する例と有しない例の両方が含まれており、その後、ピック球の取り扱いを中心にピック病の病理診断基準について種々の議論が生じることとなった。
 1980年代後半になり、従来ピック病と呼ばれていた疾患群に対し、LundとManchesterのグループがほぼ同時期にそれぞれ独立して「非アルツハイマー型前頭葉変性症(frontal lobe degeneration of non-Alzheimer type; FLD)、「前頭葉型認知症(dementia of frontal lobe type; DFT)」という類似の疾患概念を発表しました。さらに、1994年、両グループは協同で前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia; FTD)という概念を提唱し(図1)、臨床的・病理学的な診断基準を示しました。このFTDという概念の提出により、ピック病にまつわる病理学的議論にとらわれることなく、臨床情報と画像所見から脳の前方部に原発性の変性を有する非アルツハイマー型の変性性認知症疾患を包括的に捉えられるようになりました[4]。
 FTDは、病理学的に、前頭葉変性(frontal lobe degeneration; FLD)型、ピック型、運動ニューロン疾患(motor neuron disease; MND)型の3群に分類されました。FLD型はLundのグループが提唱したFLDそのものであり、抗タウやユビキチンで検出されるような封入体を伴わず、前頭・側頭葉に非特異的な軽度の変性を呈するとされました。ピック型は、従来からピック病とされている群で、肉眼的に境界鮮明な限局性萎縮があり、皮質全層に及ぶ強い変性と白質のグリオーシスを呈します。ピック球を伴うとされましたが、伴わなくても高度のグリオーシスがある症例も含まれました。MND型は、本邦で「認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症」[5]あるいは「運動ニューロン疾患を伴う初老期認知症」[6, 7]として報告されてきた疾患と同じであり、前頭葉中心の軽度の萎縮、脊髄運動ニューロンの変性、海馬および前頭・側頭葉のユビキチン陽性神経細胞内封入体(neuronal cytoplasmic inclusions; NCIs)などの病理特徴を示します。
 このFTDには、側頭葉優位の変性を呈し、失語症状を示す一群が含まれていなかったため、1996年にManchesterのグループが前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration: FTLD)という上位概念を提唱しました[8](図1)。FTLDには、従来のFTDに並列して、意味性認知症(semantic dementia; SD)と進行性非流暢性失語(progressive non-fluent aphasia; PNFA)が加えられ、2年後の1998年、FTLDの詳細な臨床診断基準が発表されました[9]。
 FTLDを構成する疾患は、2001年McKhannらが、封入体の有無およびその構成成分により病理学的に5つのカテゴリーに分類しました[10]。その内訳は、まず封入体を構成するタウのアイソフォーム組成が異なる3群で、ピック病、皮質基底核変性症 (corticobasal degeneration; CBD)、 進行性核上性麻痺 (progressive supranuclear palsy; PSP)、第17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴うFTD (frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17; FTDP-17)などが含まれます。次いで、ユビキチン陽性タウ陰性NCIsを伴うFTLD(FTLD, ubiquitinated type; FTLD-U)[11]で、これはさらにMNDを伴うタイプと伴わないタイプに分けられます。5番目の群は、どちらの封入体も認められないFTLDで、dementia lacking distinctive histology(DLDH)として以前報告されたものに相当します[12]。ただし、このDLDHについては、高感度のユビキチン免疫染色を用いて再検討すると、かなりの症例で封入体が発見されることから実はFTLD-Uであり、厳密な意味でのDLDHはまれであることが後に指摘されました[13]。
 FTLD-Uについては、2006年に2つの重要な発見がなされ、その研究に大きな進展がみられました。1つは、第17番染色体に連鎖する家族性FTLD-Uにおけるグラニュリン(granulin; GRN)遺伝子変異の同定[14, 15]であり、もう1つは、FTLD-Uおよび筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)に特徴的なユビキチン陽性封入体の主要構成成分としてのtans-activation response (TAR) DNA-binding protein of Mr 43 kDa (遺伝子: TARDBP, 蛋白: TDP-43)の同定[16, 17]です。TDP-43の蓄積は、その後、valosin-containing protein (VCP)遺伝子変異による骨パジェット病と前頭側頭型認知症を伴う遺伝性封入体筋炎(inclusion body myopathy associated with Paget disease of bone and frontotemporal dementia: IBMPFD)[18]やグアムおよび紀伊のALS/パーキンソニズム・認知症複合(parkinsonism-dementia complex; PDC)[19-21]などにも発見されました。さらに2008年、家族性および孤発性ALS例においてTARDBP遺伝子の変異が相次いで発見され、TDP-43の異常が病気の原因であることを示す遺伝学的証拠が得られました[22-24]。以上の知見を踏まえ、タウ蓄積が認められるFTLDをFTLD-tau、TDP-43蓄積を呈するFTLDをFTLD-TDPと呼ぶことが新たに提唱されました。
 さらにこの流れは、家族性筋萎縮性側索硬化症(familial ALS; FALS)の一型であるALS6の遺伝子解析において、TDP-43と類似のドメインを持つ分子の探索を優先させることとなり、fused in sarcoma(FUS)遺伝子変異の同定につながりました。この発見により、FTLDにおいて原因蛋白が不明なまま残されていた非定型的FTLD-U (atypical FTLD-U; aFTLD-U)、好塩基性封入体病(basophilic inclusion body disease; BIBD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(neuronal intermediate filament inclusion disease; NIFID)にについて免疫組織化学的検討がなされたところ、いずれにおいても多数のFUS陽性封入体の存在が判明し、FTLD-FUSという新たな概念が提唱されることになりました(図3)。東京都医学総合研究所・認知症プロジェクトにおいて所蔵する臨床的にFTDと診断された66例の病理診断の内訳は、FTLD-tauが41%、FTLD-TDPが44%、FTLD-FUSが13.5%となっています[25]。
 なお、最近は3つの臨床サブタイプ全体を表す用語としてFTLDのかわりにFTDを用い、FTLDの下位概念であったFTDをbehavioral variant FTD (bvFTD)と記載するようになり、FTLDという用語は病理診断名としてのみ用いるのが一般的になってきています[26](図2)。

第2章 疫学
 FTDの頻度については、まずスウェーデンとイギリスから、FTDは初老期に発症する一次変性性認知症の約20%を占めると報告されました[8]。その後、ケンブリッジのグループが行った人口約32万人の地域での疫学調査では、同定された108人の初老期発症の認知症患者において、(Alzhemier’s diseasea: AD)が25%と最も多く、次いでFTDが15.7%を占めました[27]。45-64歳では、FTDとADの有病率は等しく、人口10万人当たり15人でした。ロンドンの2地域における初老期認知症患者を対象とした地域調査では、認知症と診断された185人のうち、AD34%、血管性認知症 (vascular dementia: VD) 18%に次いでFTDは12%でした[28]。オランダの地域疫学研究では245人のFTD患者が見出され、有病率はケンブリッジの結果よりやや低く、人口10万人当たり、50-59歳で3.6人、60-69歳で9.4人、70-79歳で3.8人でした[29]。マンチェスターにおける初老期認知症患者に関する研究では、ADとFTDの患者数の比は約3:1であり、また発症年齢を50歳未満に限って比較するとその比は1.7:1でした[11]。以上から、FTDは初老期認知症中2番目か3番目に多い疾患であり、これまで認識されていたよりもその頻度が高いことが明らかになりました。認知症全体におけるFTDの頻度については、ミネソタ州における認知症研究の一環として1987-2006年に集められた649人の認知症患者中15人(2.3%)がFTDと診断されたとの報告があります[30]。
 本邦では、愛媛大学病院認知症専門外来の連続臨床例の検討結果があり、それによると1996年から7年間に受診した330人のすべての認知症患者のうち、ADが215人(65.1%)と最も多く、FTDが42人(12.7%)とそれに次いでいました[31]。また、兵庫県立高齢者脳機能研究センターに1995年から2年間に入院した327人の認知症患者では、ADが71%、VDが8%に続いてFTDが6.8%でした[32]。平成20年度に、茨城県、熊本県、愛媛県、富山県、群馬県の5県で実際された若年性認知症についての疫学調査の結果では、VDが39.8%、ADが25.4%、頭部外傷後遺症が7.7%、FTDが3.7%で、4番目に頻度が高いことが示されました[33]。
 ところで、FTDに関して欧米と本邦ではいくつか違いがあります。まず欧米では30-50%と高い家族歴が認められますが[8, 27, 34]、本邦ではほとんどが弧発性です[31, 35]。また、そのことに関連していると思われますが、FTDの3病理分類のうちのFLD型の病理報告は本邦ではまだ1例もありません[35]。さらに、FTDの3臨床分類のうち、本邦では欧米に比してFTDの頻度が低く、SDの頻度が高い傾向があります[31]。このように、FTDには地域差が認められます。

第3章 臨床分類と診断
(1)臨床分類
 FTDは、現在臨床的には行動型FTD(bvFTD)、SD、PNFAの3型に分類されます[2]。またFTDとは別に、原発性進行性失語(primary progressive aphasia: PPA)という概念から、意味型PPA(sematic variant PPA: sv-PPA)、非流暢/失文法型PPA (non-fluent/agrammatic variant PPA: na-PPA)、logopenic型PPA(logopenic variant PPA: lv-PPA)の3つの下位分類が存在し、SDはsv-PPAに、na-PPA はPNFAに各々相当します。
(2)bvFTDの臨床診断
 1998年のNearyらによるFTDの臨床診断基準は診断感度が低いという問題があったため、2011年FTDC(The International bvFTD Criteria Consortium)による改訂版が作成されました(図4-1~4-5)。
 bvFTDの初発症状は行動障害であることが多いのですが、その中でもアパシーと脱抑制は早期から出現頻度が高く、それぞれ85%および76%と報告されています[3]。アパシーは、意欲の減退や趣味への興味の喪失などで気づかれます。脱抑制はアパシーと共に出現することが多く、幼稚で性的な言動や浪費などがみられます。共感の喪失は、冷たく、無関心な態度を引き起こし、固執や常同性は、度々同じ言い回しや物語を繰り返すといった会話の保続として現れ、固定されたルートを歩く周遊もみられます。特定の食べ物を好み、甘い物をほしがるなどの食嗜好の変化がみられ、口唇傾向から異物を口にすることもあり、介護上の問題となります。bvFTDの認知機能障害の特徴は、実行機能が障害されますが、エピソード記憶と視空間認知が比較的保たれることです。
 神経症状としては、bvFTDの一部では、一次運動野や脊髄前角の変性により筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)と同様の運動ニューロン症状を呈する例があります。また、パーキンソン症状を呈する例もしばしば認められます。
 CTやMRIといった形態画像では、前頭葉、前部側頭葉、前部帯状回、前部島回、海馬などの大脳皮質に加え、扁桃核、線条体、視床、視床下部といった皮質下領域にも萎縮が認められます。しかし早期のbvFTDではこれらの領域の萎縮は軽微で明らかでない場合も多いことが指摘されています。SPECTおよびPET等の機能画像で検出される血流や糖代謝の低下は、主として前頭葉および側頭葉前方部に認められます。
(3)PPAの臨床診断
 FTDの下位分類であるSDとPNFAは、2011年に診断基準が発表されたsv-PPAとna-PPAに各々対応しています[4](図5,6)。PPAと診断するためには、病初期から潜行性に発症し、緩徐に進行する言語障害が存在し、認知機能障害や行動障害はあっても病初期の主要な問題とはならないことが必要です。
 SD(sv-PPA)の主要症状は物品や人物の呼称と単語の理解の障害であり、例えば、はさみを使う事は出来るがはさみという言葉が出てこない、またははさみを持ってくるように言われてもはさみを選べないといった状態を示します。特に使用頻度の低い物の呼称ほど障害されます。一方、文法、復唱、言語産出は障害されにくく、会話量は保たれますが、具体的な呼称がでてこないために、あれ、それなどの代名詞の使用が多くなります。また失読や書字障害は非典型的な読み方をする文字で多く見られます(図5)。
 PNFA(na-PPA)は、物品や単語理解は保たれるのに対して、発語失行の形式をとり、言語産出の低下、努力性の会話、ためらい、たどたどしさなどで気づかれます。不規則に出現する失調性の構音障害を呈し、音の歪みや欠損、挿入、置き換えなどが出現します。また、「呂律はまわなくなっしまた(呂律はまわらなくなってしまった)」などのように、助詞、前置詞、助動詞などの使い方が不適切で文の構造化ができないという失文法もみられます。診断基準ではこの発語失行と失文法が主要症状とされ、どちらか一方が存在する必要があります。また複雑な構文を使用した文章の理解力も低下します(図6)。
 sv-PPAの画像所見は、病初期より前部側頭葉の著明な萎縮をきたすのが特徴的で、進行すると扁桃核、嗅内皮質、海馬などの顕著な菲薄化がみられます。萎縮あるいは機能低下には通常左右差があり、右側優位例は相貌失認、左側優位例は語義失語と関連するとされます。病理学的にはほとんどがFTLD-TDPです。na-PPAの画像所見は、Broca領域である左下前頭回から島回にかけての萎縮あるいは機能低下が特徴的であり、病理的にはFTLD-tauが多いとされますが、FTLD-TDPの場合もあります。
第4章 蓄積蛋白質と病態
(1)FTLD-tau
A. タウとは
 タウは中枢神経系に多く発現する微小管結合蛋白質の一種で、神経細胞の機能発現に重要な役割を果たす微小管の重合および安定化に働く蛋白質です。タウの遺伝子はスプライシングを受け、exon 10の挿入の有無により、31-32個のアミノ酸の繰り返し配列が3つ存在する3リピートタウ (3Rタウ)と4つ存在する4リピートタウ (4Rタウ)というアイソフォームが生じます。
 タウは、ADの特徴的病理構造物の一つである神経原線維変化(neurofibrillary tangle: NFT)を構成するpaired helical filamentとstraight filamentの主要構成蛋白であることがまず判明し、その後さまざまな神経疾患にその細胞内蓄積がみられることが明らかにされてきました。タウ蓄積の意義については、1998年、第17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う家族性前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17: FTDP-17)においてMAPT遺伝子の変異が同定されたことから、タウの異常が神経変性を誘導する本質的変化であることが確実となり、タウ蓄積が生じる疾患群をタウオパチーと総称するようになりました。タウオパチーに属する疾患は多岐にわたり、アミロイドβ蛋白 (Aβ)の蓄積、感染、外傷、代謝異常などタウ蓄積の誘因があると推測される疾患とそれらが不明でタウの異常が原発性と考えられる疾患に大別されます。

B. 主要なFTLD-tauの病理生化学的特徴
 弧発性FTDを構成するFTLD-tauにおいて中心を占めるピック病は、前頭側頭葉の限局性萎縮と大脳白質のグリオーシスおよび変性領域におけるピック球と腫脹神経細胞(ピック細胞)の出現を特徴とします[36]。ピック球は、大脳皮質2層、海馬歯状回、線条体などの小型神経細胞に好発する傾向があります[37]。鍍銀染色のBodian法でよく染色されますが、Gallyas法では染色性が弱いという特徴があります[38]。光顕レベルでの形態は、球形、楕円形、馬蹄形、腎臓形などさまざまであり、その微細構造はランダムに配置されたstraight filamentsとpaired twisted profilesからなります[39]。
 FTLD-tauを病理学的に規定するのは、タウが蓄積する細胞種とタウ陽性構造物の形態および分布の違いです(図7)。また、FTLD-tau患者脳に蓄積したタウは、過剰リン酸化、断片化、ユビキチン化などの様々な翻訳後修飾を受けており[40]、特にリン酸化と断片化については、病態との関連から多くの研究がなされてきました。断片化を生じるプロテアーゼとしては、カスパーゼ[41]、カルパイン[42]、トロンビン[43, 44]、カテプシン[45]、asparagine endopeptidase[46]、puromycin-sensitive aminopeptidase[47]などが報告されています。蓄積タウのアイソフォーム組成とこれらの翻訳後修飾の違いが、各FLTD-tau患者脳に蓄積した異常タウを生化学的に規定します。すなわち、神経原線維変化型老年期認知症(senile dementia of the NFT type: SD-NFT)、ピック病などでは主に神経細胞にタウが蓄積しますが、PSP、CBD、嗜銀顆粒性認知症 (argyrophilic grain dementia: AGD)などでは神経細胞に加えてグリア細胞にも蓄積がみられます[48, 49](図7)。アイソフォーム組成については、SD-NFTでは3Rタウと4Rタウが同じ割合で蓄積するのに対し、ピック病では3Rタウが、PSP、CBD、AGD、グリア細胞球状封入体タウオパチー (globular glial tauopathies: GGT)では4Rタウが優位に蓄積します[48, 50-55]。さらに、ピック病で蓄積するタウは、262番目のセリンのリン酸化を欠くという特徴があります[52, 56, 57]。PSPとCBDは、ともに神経細胞およびグリア細胞内に4Rタウが蓄積しますが、アストロサイト内タウ凝集物の形態に疾患特異性があり、PSPではtuft-shaped astrocyte、CBDではastrocytic plaqueと呼ばれます[58]。さらに、両疾患では、不溶性画分のC末端側タウ断片のパターンが異なり、生化学的な診断マーカーとなります[59, 60](図8)。PSPとCBDは、このように病理生化学的に区別される疾患ですが、臨床的にはしばしば鑑別が困難であり、バイオマーカーの開発が必須と考えられます。近年発展が著しいタウ PET imagingはその一つとして期待されています。
 FTDP-17におけるMAPT変異は、①タウの構造を変えて微小管重合能を変化させる、②mRNAのスプライシングに影響を与えてアイソフォームの発現比率を変化させる、のどちらかの効果が確認されています。①の大部分は、リピート部とその近傍にあるミスセンス変異であり、NFTを形成するタイプ、ピック球を形成するタイプ、4リピートタウのみが神経細胞およびグリア細胞に蓄積するタイプ、などがあります。②のほとんどは、エクソン10とそれに続くイントロン10内にあり、これらの多くでは4リピートタウの発現が増加し、神経細胞とグリア細胞に4リピートタウが蓄積します。FTDP-17の臨床症状は多彩であり、変異部位によって、また同一変異内でも多様性を示しますが、大まかに2つの臨床病型に分けられ、変異部位とのある程度の対応関係が認められることが指摘されています[61]。すなわち、①の変異では行動異常、脱抑制などが目立ち、bvFTDの診断基準に合致する場合が多く、②の変異ではパーキンソニズム、核上性眼球運動障害、ジストニア、ミオクローヌス、錐体路障害などの運動症状が主要症状となり、PSPやCBDに類似する例が多いとされます。
(2)FTLD-TDP
A.TDP-43とは
TDP-43は、HIV-1ウイルスのTAR DNA領域に結合し、その転写を抑制する因子として最初に同定された蛋白質です。heterogeneous nuclear ribonucleoprotein (hnRNP)ファミリーに属し、遺伝子の転写や選択的スプライシングの調節、mRNAの安定化などに関わることが知られていましたが、最近はさらにmicroRNAの形成、アポトーシス、細胞分裂などの多彩な過程に関与することが明らかになってきています。
B. 特徴的な病理構造物
a. 神経細胞質内封入体(neuronal cytoplasmic inclusions; NCIs) (図9-A, B)
 TDP-43陽性のNCIsは、当初タウ陰性ユビキチン陽性のNCIsとして、ALS患者の海馬領域に最初に同定され、次いでFTLD例にも認められることが報告されました。前頭・側頭葉皮質および海馬歯状回に出現しやすく、リン酸化非依存性抗TDP-43抗体を用いて免疫組織化学染色を施行すると、NCIsを有する神経細胞では核のTDP-43染色性が消失していることが特徴です[16]。
b. 神経細胞核内封入体(neuronal intranuclear inclusions: NIIs) (図9-B)
 NIISは、家族性FTLD-Uにおいて最初に同定されました。それらの形態は、レンズ状 (lentiform) あるいはネコの目様(“cat’s eye” appearance)などと表現され、大脳の様々な領域の小型ニューロンに好発します。
c. 変性神経突起(dystrophic neurites: DNs) (図9-C)
DNsには、短いDNsと長いDNsの2つのタイプがあります。前頭・側頭葉皮質の第II層に好発しますが、長いタイプはより全層性に出現する傾向があります。
d. Preinclusions (図9-D)
 ALSおよびFTLD-TDP例の脊髄あるいは脳神経核の運動ニューロンには、びまん性あるいは顆粒状のTDP-43の細胞質内染色像がしばしば観察されます。これらはpreinclusionsと呼ばれ、細胞質内のTDP-43が凝集し、封入体を形成する前の段階にあると推定されています。
e. スケイン様封入体(skein-like inclusions: SLIs) (図9-E) と円形封入体 (round inclusions: RIs) (図9-F)
 SLIsは、MNDの脊髄前角細胞に認められるユビキチン陽性のスケイン様の構造としてLeighらにより最初に報告されました。運動ニューロンに出現するSLIsとRIsは、孤発性ALS例全例に出現することから病理学的診断マーカーとされています。
f. グリア細胞質内封入体(glial cytoplasmic inclusions: GCIs) (図9-G, H)
 GCIsは、TDP-43およびp62に陽性ですが、ユビキチンにはほとんど陰性です。神経変性疾患患者脳のオリゴデンドロサイトにおいてしばしば陽性となる補体蛋白のC4dに対する抗体と抗リン酸化TDP-43(pTDP-43)抗体との免疫二重染色を施行すると、しばしば両蛋白の共局在が認められることから、その由来は主としてオリゴデンドロサイトであると考えられます[62]。GCIsは、皮質より白質に多く、ほとんどのTDP-43蛋白症に認められますが、特にALSとFTLD-MND例に多く出現します。
C. TDP-43病理に基づくFTLD-TDPの分類
 FTLD-TDPは、大脳皮質のTDP-43陽性構造の形態に基づくタイプ分類が確立しています[63]。すなわち、NCIsと短いDNs主体のタイプA、NCIs主体のタイプB、長いDNs主体のタイプC、NIIs主体のタイプDの4つのタイプです(図10)。
 Josephsらは、FTLD-TDPに関する4つの大規模な臨床病理研究のデータから各サブタイプの頻度を算出し、タイプAが41%と最も多く、次いでタイプBが34%、タイプCが25%の順であったと報告しました[64]。東京都医学総合研究所・認知症プロジェクトで所蔵する29例のFTLD-TDPでは、タイプBが48%で最も多く、次いでタイプCが34%、タイプAが17%でした。
D. 遺伝子変異による家族性FTLD-TDP
a. GRN変異
 GRN遺伝子から産生される蛋白質であるプログラニュリン (progranulin: PGRN) は、成長因子の一種であり、細胞増殖、腫瘍形成、創傷治癒、発達、炎症などの多くのプロセスに関与します。脳では大脳皮質表層の神経細胞、海馬の錐体細胞および顆粒細胞、小脳のプルキンエ細胞に発現します[65]。
 GRN変異例の臨床像は、主としてbvFTDかPNFAであり、パーキンソン症状をしばしば認めますが、運動ニューロン症状はまれです。病理学的には、TDP-43陽性のNCIs、DNs、NIIsが、変性が生じている大脳皮質の第II層や海馬歯状回に出現します。
 GRN変異は、現在までのところ、最初のエクソンを除くすべてのエクソンとほとんどのイントロンに、病原性が不明なものも含めて149か所に一塩基置換、挿入、欠失などが同定されています。
 変異による機序としては、ハプロ不全 (haploinsufficiency)が想定されています。すなわち、変異型mRNAがナンセンス変異依存分解機構(nonsense-mediated decay)によって分解されるために無発現となり、機能型PGRN蛋白が減少することによるとされます。GRNノックアウトマウスでは、社会的行動障害や海馬依存的な学習・記憶障害が認められます。PGRN蛋白の減少からTDP-43蓄積を経て神経変性に至る機序については未だ不明な点が多いのが現状ですが、PGRNが炎症の抑制作用を有することから、神経炎症との関連性が注目されています。
b. C9ORF72遺伝子変異
 2006年より、家族性FTD-ALSの連鎖解析等から、第9染色体短腕21領域への関連が多数報告されていましたが、2011年、C9ORF72が原因遺伝子として同定されました[66]。これらの報告では、C9ORF72のエクソン1aと1bの間にあるイントロンにGGGGCCというヘキサヌクレオチドの繰り返し配列の異常伸長が発見されました。健常人でのGGGGCCリピート数は2-23であるのに対し、患者では700以上に伸長していると推測されています[66]。
 変異例の臨床像は、FTD、ALS、あるいは両者の合併です。FTDの臨床病型としては脱抑制型のbvFTDの報告が最も多いですが、PNFAあるいはSDを示した例の報告も少数あります。基本的な病理像は、FTLD-TDPとALSのコンビネーションであり、TDP-43陽性NCIsが、大脳皮質、海馬、基底核、黒質、脳幹および脊髄の運動ニューロンなどに広汎に分布します。
 さらに、変異例では、TDP-43陽性NCIs以外に、TDP-43陰性・p62陽性のNCIsが海馬錐体細胞や小脳顆粒細胞に出現します。2013年、C9ORF72のGGGGCCリピート部分が開始コドンなしに非定型的に翻訳され、読み枠の違いによって3種類のジペプチドが産生され、これらのジペプチドリピート蛋白質が上記のNCIs中に存在することが明らかにされました[67, 68]。C9ORF72変異によって発症するFTDにおいて、TDP-43陽性封入体が非常に少なく、ユビキチンあるいはp62陽性封入体が多数観察されるFTLD-UPS (ubiquitin proteasome system) に分類される症例がありますが、このFTLD-UPSでは、TDP-43ではなくジペプチドリピートタンパク質が神経変性・細胞死に深く関わっている可能性が示唆されています。
E.FTLD-TDP患者脳に蓄積しているTDP-43の生化学的特徴
 筆者らは、FTLD-TDPおよびALS患者脳に蓄積したTDP-43のリン酸化部位を明らかにするため、ヒトTDP-43上に56ヶ所存在するセリン/スレオニン部位から36ヶ所を選び、各々のリン酸化ペプチドを合成してウサギに免疫しました[69]。その結果、C末端側の379、403、404、409、410番目のセリンをリン酸化したペプチドに対する抗体が、免疫組織化学的にも生化学的にも反応性を示したことから、患者脳に蓄積したTDP-43においてはこれらの5つの部位でリン酸化が生じていることが明らかになりました。これらのうち、403番目と404番目のセリン(pS403/404)、および409番目と410番目のセリン(pS409/410)をリン酸化したペプチドに対する抗体の反応性が最も強いという結果が得られました。市販のリン酸化非依存性抗TDP-43抗体が、異常構造以外に正常の核も染色するのに対し、リン酸化TDP-43(pTDP-43)特異抗体は異常構造のみを染色することから、リン酸化は疾患特異的な変化であることが示唆されました(図9-A,B)。また、患者剖検脳から調整した不溶性画分について、pTDP-43特異抗体を用いてイムノブロットを行うと、45kDaのバンド、~25kDaのバンド、スメアのみが検出されました。特に、~25kDaのバンドの反応性は45kDaのバンドより強いことから、リン酸化して蓄積している異常TDP-43は、全長よりもそのC末側断片の方が多いことが判明しました。さらに、イムノブロット上のこのC末側断片のバンドパターンが、FTLD-TDPの病理サブタイプ(A-C)ごとに異なったパターンを呈することから(図10)、蓄積TDP-43のコンフォメーションの違いが病理像を規定している可能性が示唆されました。
(3)FTLD-FUS
A. FUSとは
 FUSは、ヒト粘液性脂肪肉腫 (myxoid liposarcoma)において、転写因子のCCAAT enhancer binding homologous protein (CHOP)と融合遺伝子を形成し、癌化を誘導する因子として発見されました。その後、転座によりEwing肉腫や急性骨髄性白血病が発症することも報告されました。Ewing sarcoma (EWS)やTATA-binding protein-associated factor 15 (TAF15)などとともにFET蛋白ファミリーに属します[70]。
 FUSの遺伝子は染色体16p11.2上に存在し、15個のエクソンからなり、アミノ酸526残基の蛋白質をコードします。RNA認識モチーフとグリシンリッチドメインを1個ずつ有し、N末側(QGSY-rich region)でポリメラーゼと結合することにより転写促進、C末側でmRNA/DNAと結合あるいは他のhnRNPと複合体を形成することによりpre-mRNAのスプライシングや輸送の調節に関与します。FUSの細胞内局在については、ほとんどの細胞種で核と細胞質の両方に存在することが報告されていますが、神経細胞では細胞質よりも核に多く存在する傾向があり、グリア細胞では核にのみ存在します。
 下記のFTLD-FUSに属する3疾患では、α-インターネキシン陽性NCI、好塩基性封入体、FUS陽性構造の3種類の異常構造が共通して認められますが、その頻度と分布に各々の特徴があります。
B. aFTLD-U
 2008年、Mackenzieらは自験83例のFTLD-U例について検討し、77例(93%)がFTLD-TDP、6例(7%)がaFTLD-Uであったと報告しました[71]。aFTLD-U例の発症はすべて初老期であり、臨床表現型はbvFTDでした。病理学的には、側頭葉に比べ前頭葉の変性が強く、ユビキチン免疫染色では、NCIsとNIIsが多発しますがDNsに乏しいという特徴があります。2009年、Neumannらは15例のaFTLD-Uについて検討し、全例にFUS陽性のNCIs、NIIs、DNs、GCIsを認めました[72]。FUS陽性構造は海馬歯状回に最も目立ち、前頭・側頭葉皮質および線条体に中等度認められました。全例が生前ALSの臨床症状を示さなかったにもかかわらず、延髄および脊髄の下位運動ニューロンにFUS陽性のNCIが認められ、ALSとの連続性が示唆されました。FTLD-TDPと比較すると、封入体を形成した細胞においてTDP-43は常に核から失われるのに対し、FUSは核の染色性が低下するものから保たれるものまでさまざまである点が異なっていました。さらに、患者剖検脳から調整した不溶性画分の生化学的解析においても、FUSのリン酸化や断片化を示唆する所見が得られない点もTDP-43とは異なりました。Neumannらは、可溶性FUSと不溶性FUSのバンドの比を算出して比較すると、aFTLD-U群の方がFTLD-TDP群および対照群より有意に不溶性FUSの比率が高く、これがFUSの異常蓄積を反映した所見であるとしています。2010年、国際的な共同研究により37例のaFTLD-Uについて解析されたところ、34例(92%)にFUS病理像が認められたことから、aFTLD-UのほとんどはFTLD-FUSに属することが明らかとなりました[73]。
C. BIBD
 好塩基性封入体(basophilic inclusions: BIs)(図11)はもともと10歳代で発症するALSで発見され、その後成人発症のALS、認知症を伴うALS、FTDなどで報告されました。FTDの症例は最近までgeneralized variant of Pick's diseaseと呼ばれており、2008年の時点で報告例は10例程度とまれです[74]。BIBDはFTLDの病理分類に入っていますが、Munozら、Mackenzie らはBIsを伴うALSおよび両者を合併したタイプもBIBDに含めています[71, 75]。
 Munozらは、7例のBIBD例についてFUSの免疫組織化学的検討を行いました[75]。これらの臨床診断名の内訳は、FTDが4例、ALSが2例、PSPが1例でした。BIBDでは、ALSで発症した後に認知症を合併する例やFTDで始まりALSを合併する例が存在する点がFTLD-TDP, Type Bに似ています。ただし、これらのBIBD例ではBunina小体は認められません。BIsは大脳皮質、線条体、海馬、扁桃核、黒質、小脳歯状核、下位運動ニューロンなどに出現します。FUSの免疫染色(図12参照)では、HE染色で認められるBIsより多くのNCIsが同定され、さらにGCIsも認められました。NIIsは 7例中2例でしか認められませんでした。
D. NIFID
 2003年、Josephsらがニューロフィラメント陽性の封入体を有するFTLDを独立した疾患単位として報告しました[76]。その後同じく中間径フィラメント(intermediate filament: IF)であるα-インターネキシンの免疫染色が最も感度が高いことが報告されました[77]。2009年の時点で報告例は20例です。
 Josephsらがまとめた4例中1例では家族歴があり、2例でL-dopa不応性のパーキンソニズム、失行、他人の手徴候、ジストニアなどのCBD様の症状を呈していました。
 Cairnsらの検討では、発症年齢は23-56歳(平均40.8歳)で、10例中7例がbvFTDを呈し、また8例に錐体外路徴候が認められました。BIBDと比較し、臨床的にALS症状がみられることはまれで、全経過中ALS症状のみに終始した例の報告はありません。
 神経病理学的に、変性は前頭側頭葉皮質と尾状核に強いのが一般的ですが、前頭葉後部から頭頂葉の変性が強い例の報告があり、それらはCBD様の症状と対応する可能性があります。Neumannらは、5剖検例について、HE染色およびユビキチン、α-インターネキシン、FUSの免疫染色を行い、封入体の形態、分布、染色性などについて比較検討したところ、NCIsはHE、ユビキチン、FUSで同程度によく染まるが、α-インターネキシンではやや染色性が低かったと報告しました[78]。また、海馬歯状回顆粒細胞や皮質錐体細胞に好発するNIIsは、ユビキチンとFUSで同程度に染色され、さらにGCIsはFUSにのみ陽性を示して多数観察されました。このように、おおまかな傾向としてα-インターネキシン、ユビキチン、FUSの順に染色性が上がり、陽性構造物がより多く認められるようになることから、NIFIDにおいてはα-インターネキシンよりもFUSがより本質的な病因蛋白であるとされました。
E. FET protein familyとFTLD-FUSおよびALS-FUS
 最近、免疫組織化学的解析により、FTLD-FUS例ではEWSおよびTAF15がFUS陽性封入体に共存していること、および封入体を有する神経細胞の核ではこれら3種類の蛋白の染色性が低下することが明らかになりました[79]。以上から、FTLD-FUSにおいては、FUSだけでなくそのファミリー蛋白も病態に関与していると考えられることから、FTLD-FETという用語が新たに提案されています。一方、ALS-FUS例では、EWSおよびTAF15に陽性の封入体は認められず、FTLD-FUSとALS-FUSの病理過程に違いがある可能性が指摘されています。
(4) FTLDの臨床病理対応
 均一性が高い群としては、SDは通常孤発性であり、病理像はFTLD-TDP, Type Cです。ただし、ピック病と同様のタウ病理を示したとする報告もごく少数あります。孤発性PNFAの背景病理としては、FTLD-tauの方がFTLD-TDPより頻度が高いとされます。FTD-MNDの病理は通常FTLD-TDP, Type Bです。一方、パーキンソニズムを伴うFTDでは、FTLD-tau (CBDかPSP)の頻度が高いとされます。MNDを伴わないbvFTDは、すべてのFTLDの病理像を呈し得ますが、早期発症で行動障害が前景であり、運動障害と失語を欠く例は、aFTLD-Uと親和性があると報告されています。ただし、これまで本邦におけるaFTLD-Uの剖検報告はありません。
 家族性例では、運動障害を伴わない常染色体優性遺伝形式の家族性bvFTDあるいはPNFAの原因遺伝子は、C9ORF72、GRN、MAPTのいずれかの変異の可能性が高いです。パーキンソニズムかprimary lateral sclerosis (PLS)が目立つ例はMAPT変異の可能性が高く、MNDを伴う例はC9ORF72変異の可能性が高いとされます。遺伝子変異とFTLD-TDP病理サブタイプとの関連では、GRN変異例はタイプA、C9OFR72変異例はタイプB、VCP変異例はタイプCの病理を各々示します。
(5)FTLDの病態機序に関する最近のトピック:伝播仮説
 プリオン病は、異常プリオンの蓄積とそれによる神経変性および種々の認知機能障害を呈する疾患群です。プリオン病では、同種間あるいは異種間で感染し、また末梢神経系から中枢神経系へと病変が広がることから、細胞間での伝播が特徴と考えられています。その分子レベルでのメカニズムは不明な点が多いですが、βシート構造に富む異常プリオンが、何らかの作用で正常プリオンのコンフォメーションを変化させ、異常プリオンに変えていくと考えられています。このような異常蛋白の細胞間伝播が、タウおよびTDP-4においても生じているとする知見が最近集積し、注目されています。
 タウについては、DiamondらのグループおよびGoedertとTolneyらのグループによる報告が最初です。Diamondらは、培養脳組織の上清中にタウ線維を加えたところ、それらが神経細胞に取り込まれ、細胞体内にタウ凝集物が形成されること、および凝集物が細胞から細胞に伝播することを報告しました[80]。一方、GoedertとTolneyらは、ヒト変異型タウ遺伝子(P301S)を導入した遺伝子改変マウスの脳抽出物をヒト野生型タウ遺伝子を導入した遺伝子改変マウスの大脳皮質および海馬に接種したところ、ヒト野生型タウの細胞内凝集が起こり、この凝集物は時間とともに接種部位から周囲へと広がっていくことを報告しました[81]。
 さらに最近、プリオン strainに倣い、タウ strainという概念が提唱されるようになりました。Clavagueraらは、野生型のヒト最長4Rタウを過剰発現させた遺伝子改変マウスの脳に、AD、ピック病、PSP、CBD、AGDの各タウオパチー患者脳からの抽出物を接種したところ、ピック病を除いて各タウオパチーに特徴的なタウ陽性病理構造物が形成されたことを報告しました[82]。Sandersらは、タウのリピート部を過剰発現させた培養細胞に、AD、ピック病、PSP、CBD、AGDの各々の患者脳からの抽出物を導入した結果形成されるタウ陽性構造を比較し、特にAD、CBD、ピック病では各々異なった形態のタウ陽性構造が形成されることを示しました[83]。
 プリオン病の伝播の際にstrainが保持される機序は不明ですが、患者脳から抽出した不溶性画分をプロテアーゼ処理後にイムノブロットを行うと、MM1型、VV2型、変異型などの各病型ごとにプリオンのバンドパターンが異なることから、異常プリオンのコンフォメーションの違いが背景にあると推測されています。プロテアーゼ処理後のイムノブロットのバンドパターンの違いは、FTLD-TDPの各病理サブタイプに蓄積したTDP-43[84]や、PSPとCBDに蓄積した4リピートタウにおいても認められます。そして、このバンドパターンは、FTLD-tauであれFTLD-TDPであれ、脳のどこの部位を調べても同じであり、それは異常構造の形態や細胞種に依存しません[84]。このことは、同じ疾患では、蓄積蛋白はそれが脳のどの部位や細胞種に蓄積しようと、断片化やリン酸化等の修飾やコンフォメーションは同じであることを示唆しています。このような異常タウあるいはTDP-43の疾患特異的なコンフォメーションが、各疾患の病理像を規定し、さらに伝播の際のstrainの保持に関与している可能性があります。
 伝播の機序は現時点では不明ですが、線維連絡に沿ってシナプスを介して伝わるという仮説が提唱されています。異常蛋白が細胞外に出る機序の一つとしてエキソソーム(exosome)として細胞外に放出される可能性が指摘されています。また、最近モノマーのタウが神経活動依存性に細胞外に分泌されることが報告されており[85, 86]、伝播の機序との関連から注目されています。
第5章 治療
 現時点ではFTDの認知機能障害を改善する薬剤はありません。ADの治療薬として用いられているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬およびメマンチンの、FTDにおける認知機能障害あるいは行動障害に関する効果については一致した見解が得られておらず、むしろこれらを悪化させたという報告もあります。
 FTDの行動障害に対する治療の原則として、非薬物的介入がまず試みられるべきとされています。FTDの非薬物療法としては、池田らが手続き記憶の保持と常同性を利用して、作業、料理、編み物などを1日の日課に組み入れる方法を「ルーティーン化療法」として報告し、その有効性が確立しています。また、横田らは、グループホームにおけるきめ細かなケアの有効性を報告しています。
 薬物療法としては、脱抑制、自発性低下、食行動異常、常同行為、焦燥、興奮などに、SSRI(フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン)およびセロトニン2Aアンタゴニスト/再取り込み阻害薬であるトラドゾンの有効性が報告されています。また、同様の症状に抑肝散が有効であるという報告もあります。これらの薬剤が無効であった場合に、リスペリドンやクロルプロマジン等の抗精神病薬の使用を考慮しますが、副作用の出現に留意し、可能な限り少量での使用にとどめ、漫然と投与を継続しないようにすることが肝要です。
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